初心者の方で音楽理論を学ぶ際に、比較的早い段階でトーナリティ(調性)のレッスンを行います。その中で、平行調や同主調を扱うのですが、同主調は簡単で、CをCmに、DをDmに、と変えるだけです。しかし、ややこしいのは平行調です。ですが、これを覚えるととても便利なんです。
ややこしさ、という問題もありますが、1番の問題は、この初心者の段階では平行調の重要性が分からない、ということです。学習というのは常にこういったことの連続で仕方のないことなのですが。僕も昔はそうでした。一体これを覚えて、「だから何になるの?」なんて思ったりしてました。笑。ですから勉強のコツは、とにかくその「目的」を知ることなのだと思います。
コードの代理も、スケールの代理も、同じ位置関係になる
では、平行調を知るとどんな良いことがあるのでしょうか。一つは、平行調同士に出現するダイアトニックコードが同じであることが分かることです。例えばC#mのキーの曲を演奏する際に平行調がEだと分かれば、「あ、じゃおそらく、AやBのコードも出てくるな」と予測することができます。また、スケールを弾く際にも便利です。特にギターはマイナーに変換した方が弾きやすい場合が多いので、例えばEbメジャースケールを弾く際に「あ、じゃあCマイナースケールでいいんだ」と理解できると、とても楽です。
とはいえ、これだけではまだ、平行調を覚えることの利点がはっきりしないかもしれません。そこで、もう少し先、中〜上級あたりの理論についても少し触れてみます。例えば、Cリディアン・スケールというものがありますが(今は分からなくても大丈夫です)、これは実はAドリアン・スケールと同じです。どういうことかと言うと、ダイアトニックコード上のIの代理はVImです(他にIIImもありますが、ここでは置き)。これがつまり、平行調の関係で、短3度下になります。次にIVの代理を考えるとIImです。すると、こちらも短3度下にIImがあります。つまりトニックとサブドミナントの代表的な代理コード(それぞれVIm、IIm)は、同じ位置関係にあるということです。また、それに対応するモードも同じことです。
つまり、ルートをCに揃えて説明すると、1)Cメジャースケールを弾こうと思ったら、=Aマイナースケールと考えても良い(C=Am、これがつまり平行調ですね)、2)Cリディアン・スケールを弾こうと思ったら、=Aドリアン・スケールと考えても良い、3)Cリディアン#5スケールを弾こうと思ったら、=Aメロディック・マイナースケールと考えても良い、4)Cリディアンb7スケールを弾こうと思ったら、=Aドリアンb2スケールと考えても良いということです(まだまだ他にもありますが、割愛。ちなみに、上級者の方でメロディックマイナーの転回型を勉強したい方は、こちらを参考にしてください→「メロディックマイナー・スケールの5つのポジション」)。また、それに対応するコードも同じです(例えば、C△7(#5)とAm△7は代理関係になります)。と、ここまで書いて初心者の方は何が何だか分からないかもしれませんが、全然問題ありません。ただとにかく、この変換(平行調)の法則を覚えておくと、後々非常に便利だということがこの記事の主旨です。
学習にはいつもこういう問題がつきまといますよね。例えば僕は三平方の定理を習ったときに、なぜそんなことを知ることが大事なのか、全く分かりませんでした(笑)。でも後日、例えば何か日曜大工をしなきゃならない、といった際に(自分で棚を作ったりとか)、正確に直角を測る必要が生まれた時にはじめて、「ああ、だから必要なのか」とその必要性が分かるわけです。
初心者の方には少し難しい話になってしまいましたが、今は理解できなくても大丈夫です。ただ、「後々、いろんなことに便利なんだな」と思ってもらえると嬉しいです。平行調のお話でした(^^)