今回はジャズ・ファンクのスタンダード、Billy Cobham作曲の「Red Baron」です。
楽曲の背景
ビリー・コブハム(d)はホレス・シルバーらと活動した後、70年には「Dreams」に参加。このバンドは商業的に成功はしませんでしたが、ブレッカー兄弟やジョン・アバークロンビーなどの重要人物が数多く参加した伝説のバンド。70年代のマイルスのアルバム「Live-Evil」 (1970)、や「Get Up with It」 (1974)などにも参加し、平行してマハビシュヌ・オーケストラにも参加と、クロスオーバー黎明期に大活躍したドラマーです。
「Red Baron」は、1973年にリリースの、コブハムのリーダー作『Spectrum』に収録。 このアルバムはのちに Deep Purple に加入するギタリスト、Tommy Bolinが素晴らしいプレイを披露していることでも知られる、ギタリスト必聴のアルバムです(特に一曲目のQuadrant 4でのボーリンのプレイが凄い)。また、同アルバム収録の「Stratus」という曲もスタンダード化している曲なので、ぜひ聞いてみてください。
楽曲のアナライズ
いわゆる一発ものなので、基本的にそれほど難しくありません。とはいえ、それ故にどう発展させバリエーションをつけていくかが難しい曲ともいえます。
テーマに関しては、目立つのは、やはり4小節目のポリリズム(グルーピング)の部分でしょう。これは、「C#-D-Bb-A-G」という音型が1小節内に3つ収まったもの。A音を装飾と捉えると、よく見かける定番の、「4×3=3×4=12」のポリリズムだと分かります。三連符で、
「たにま/ちたに/まちた/にまち」
と、「たにまち」が3回繰り返されているという訳です。ここはこの曲のハイライトなので、リズムセクションとしっかり合わせたいところです。
次にアドリブパート。ネットなどで見かける譜面では「Gm7-C7」と書かれているものもありますが、原曲は「G7-C7」、つまりブルースのI7とIV7と捉えるのが正しいと思います(もちろん、分かった上であえてGm7で演奏したい、というのは良いと思います)。1)Gマイナーペンタ一発、2)G Dorian一発、3)G Mixo LydianとC Mixo Lydian、、など、様々なアプローチが可能だと思います。
イントロとエンディング
G7-C7のVamp的な繰り返しのまま、良い雰囲気になったところで自由に入る感じです(ただし、4小節、8小節、16小節など、区切りの良い部分で入ることが大切です)
エンディングは原曲ではフェードアウトですが、セッション時はキメの終わり、Eb/Dbが伸びた後の4拍目最後の16分でカットオフで終わることが多いです。再びG7-C7が始まってしまうと、なかなか終われません(笑)
どちらかといえばファンク寄りのジャズ曲ですが、全員がキメさえ知っていれば、ロックからファンク、ブルースのプレイヤーとも演奏しやすい、楽しい曲です。ぜひトライしてみてください(^^)