ブルース映画「クロスロード」

十字路のブルースマン

 Tくんとのレッスン中に、映画「クロスロード(1986)」の話に。もちろんその名の通り、ブルースを題材とした映画です。青春もののロードムービー、といった感じで、ストーリー自体はそれほど特筆すべきものでもないのですが、脇役として散りばめられた人物、地名、風景など、ギタリストにとっては楽しい映画です。

 あの伝説のブルースマン、ロバートジョンソン。残された彼の29曲の録音以外に、実はいまだ知られていない最後の1曲が存在して、それをある黒人の老囚人が知っている、その老人の正体は、やはり同じく伝説のブルースマン、ウィリー・ブラウンで、それで主人公とウィリーは共に、その残された1曲を探しに南部へと旅立つ、、。ざっくりとしたあらすじは、こんな感じです。ラストに悪役ギタリスト役で、若かりし頃のスティーブ・ヴァイも出てきます。最後に主人公とのギターバトルに負け、ギターを床に叩きつけて帰っていくというちょっとコミカルな役で、それも楽しい。それはいいのですが、そこでTくんの質問。
「先生、このウィリー・ブラウンって、本当にいたんですか?」

目次

ウィリー・ブラウンは実在したが、実はギタリスト

 確かにTくんの言う通り、実在した人物です。ただ、この映画でのウィリー・ブラウンはヴォーカル&ハーピストとして、現代まで長生きし、老囚人として収監されているという設定なのですが、実際のウィリー・ブラウンは違います。実際のウィリーはギタリストで、1952年には亡くなってます。あまり多くの音源は残されていませんが、実際、チャーリーパットンやサンハウス、そしてもちろんロバートジョンソンとも共に活動していた、文字通り伝説のギタリストです。また、ロバジョンの、「まだ発見されてない1曲」というのも映画上の架空の設定ですが、ただ、あながち全くの出まかせという訳でもなく、それに関連した興味深い話がありますので、このウィリー・ブラウンのことも含めて、【note】の方で詳しく書いてみました。よかったら読んでみてください。

→【note】映画「クロスロード」と残された1曲

 全編で聞かれる主人公の弾くスライドは、あのライ・クーダーによるプレイです。クラークスデールあたりの風景もふんだんに出てきますし、何といっても、ブルースギターを題材にした映画なんてほとんど無いので(ジャズの映画はたくさんあるのにね)、ほんと、楽しい映画です。まだ見ていない方は、ぜひ見てみてください。

目次